ときどきどきどき(3)

不整脈

今回は、不整脈が止まる条件を「確率論」で考えるとはどういうことなのか、お話ししたいと思います。

「確率論」と聞くと、少し難しそうですね。

でも、考え方は意外と簡単です。

1.1回の「○」や「×」だけでは分からない

たとえば、

「冷たい水を飲んだら、不整脈が止まった!」

という経験が一度あったとします。

この1回だけで、

「冷たい水には不整脈を止める効果がある!」

と考えてしまうのは、ちょっと早いかもしれません。

たまたま、そのタイミングで不整脈が自然に止まっただけかもしれないからです。

大切なのは、何度か経験してみることです。

何度繰り返しても、

「冷たい水を飲むと、不整脈が止まることが多い」

のであれば、そこには何らかの関係があるのかもしれません。

反対に、ある時は止まったけれど、別の時には止まらなかったのであれば、

「冷たい水を飲めば不整脈が止まる」とは簡単には言えません。

つまり、

1回の「止まった・止まらない」だけで判断しない。

これが「確率論」で考えるということです。

「たまたま」や「思い込み」の影響をできるだけ取り除くことで、本当のところが少しずつ見えてきます。

以前書いた「エビデンス」の考え方にも、少し似ていますね。

2.「思い込み」は意外とやっかい

「たまたま」は、何度か繰り返してみれば比較的分かりやすいものです。

ところが、「思い込み」は少しやっかいです。

「思い込み」というと、

「気のせいじゃないの?」

と思われるかもしれません。

もちろん、精神的な影響もあります。

でも、ここでいう「思い込み」には、もっと気付きにくいものがあります。

それは、

「目的の行動に付いてきた、別の行動」

です。

3.「冷たい水」の陰に、いろいろな動作がある

たとえば、

「冷たい水を飲むと不整脈が止まる」

という場合を考えてみましょう。

冷たい水を飲むためには、実はいろいろなことをしているかもしれません。

  • 台所まで歩いて行く
  • 古い冷蔵庫の扉を、息を止めて力いっぱい開ける
  • 氷を素手で取ってコップに入れる
  • 低い蛇口から水を入れるため、前屈みになる
  • コップの水を一気に飲む
  • 水を飲んでいる間、息を止めている

こうして並べてみると、

「冷たい水を飲む」という一つの行動の中に、いろいろな動作が隠れている

ことが分かります。

そして、その中のどれかが、不整脈が止まることに関係している可能性もあるのです。

4.「冷たい水が効かなくなった」のではないかもしれません

実際に、

「いつも冷たい水を飲むと不整脈が止まるのに、今回は止まりませんでした」

と心配して受診された方がいました。

よくお話を聞いてみると、その日は奥さんに冷たい水を持ってきてもらっていたそうです。

つまり、

いつもは自分で台所まで歩いて行っていた。
でも、その日は歩いていなかった。

ということです。

「冷たい水が効かなくなった」のではなく、いつも一緒に行っていた別の行動がなかっただけなのかもしれません。

このように、「これをすると不整脈が止まる」と思っている行動の中には、本人が意識していない別の動作が隠れていることがあります。

5.不整脈が起きたときこそ、観察してみる

不整脈が出ているときに心電図を記録できれば、それが一番です。

ただ、実際には病院にいるときに、ちょうど不整脈が起こるとは限りません。

「ときどきどきどき(時々ドキドキ)」するけれど、これまでに診察を受けていて、強い症状のない不整脈だと分かっている方なら、

「またドキドキした!」

と慌てるだけではなく、

「今回はどんなドキドキだろう?」

と少し冷静に観察してみるのも一つの方法です。

脈の速さや間隔はどうか。

どのくらい続いたか。

何をしていたときに始まったか。

そして、どんなときに治まったのか。

こうした記録は、後の診察にも役立ちます。

6.「止まった・止まらない」だけで考えない

不整脈の「ドキドキ」は、とても不安になる症状です。

だからこそ、

「止まった・止まらない」の○×だけで考えない。

「今回はどうだったのか」と少し距離を置いて観察してみる。

それだけでも、不整脈との付き合い方が少し変わってくるかもしれません。

※もちろん、胸の強い痛み、息苦しさ、意識が遠のく・失うなどの症状を伴う場合は、様子を見ずに早めに医療機関へご相談ください。

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