前回に引き続き、今回も「不整脈」のお話です。
不整脈で受診される方のお話を伺っていると、あることに気づきます。
「ドキドキしている最中の様子」は、なかなか冷静には説明できません。
ところが、
「どうしたらドキドキが止まるのか」
については、驚くほど詳しく覚えている方が多いのです。
「冷たい水を飲んで、左を下にすると……」
例えば、こんなお話です。
「ドキドキしたら、冷たい水を飲んで、左側を下にして横になるんです。すると5分くらいで喉のあたりが『キュー』となってきて、その2分後くらいにドキドキが止まります。時々、何回か同じことをしないと止まらないこともあります。」
ここまで詳しく覚えておられることに、こちらが感心することもあります。
そこで、
「常温の水ではどうですか?」
「右側を下にしたら?」
「何もしなかったら、どのくらい続きますか?」
などと、さらに詳しくお聞きします。
すると、患者さんが少し寂しそうな表情をされることがあります。
おそらく、
「先生、そんなにいろいろ聞かないでください……」
というお気持ちなのかもしれません。
「止まる条件」が増えていく
もちろん、こうした情報は診断のためにとても役立ちます。
「何をすると症状が止まりやすいのか」は、大切な手がかりになることがあります。
ただ、ここには少し注意が必要です。
例えば、
「冷たい水を飲むと止まる」
という経験をすると、次にドキドキした時、
「冷たい水を飲まなければ!」
と思うようになります。
それでも止まらなければ、
「今度は左を下にしてみよう」
となります。
それでもダメなら、
「もう一度水を飲んで……」
と、どんどん条件が増えていきます。
気がつけば、
「ドキドキを止めるためのおまじない」
のようなものが、いくつも出来上がってしまいます。
「前は止まったのに……」
さらに心配なのが、
「前はこれで止まったのに、今回は止まらなかった。だから不整脈が悪化したのでは?」
と考えてしまうことです。
これは、とても不安になりますよね。
しかし、
「今回は止まらなかった」
という一回の出来事だけで、不整脈が悪化したと判断することはできません。
不整脈には、自然に止まるものもあれば、しばらく続くものもあります。
また、同じことをしても毎回同じ結果になるとは限りません。
「○か×か」ではなく「どのくらい?」
ここで大切になるのが、
「○か×か」ではなく「確率」で考えること
です。
例えば、
「冷たい水を飲めば必ず止まる」
ではなく、
「冷たい水を飲むと、止まることが多い」
と考える。
「左を下にすれば止まる」
ではなく、
「左を下にすると、止まりやすい気がする」
と考える。
この違いは、実はとても大切です。
一度うまくいかなかったからといって、
「もう効かない」
「不整脈が悪化した」
と決めつける必要はありません。
「おまじない」は悪いこと?
もちろん、自分なりの方法で症状が楽になるのであれば、それ自体が悪いわけではありません。
ただし、
「これをしなければ絶対に止まらない」
と思い込んでしまうと、ドキドキするたびに不安が大きくなってしまいます。
そして不安が大きくなると、今度は「ドキドキ」そのものにも敏感になってしまいます。
大切なのは、
「これをすると止まることが多い」
くらいに、少し余裕を持って考えることです。
不整脈を「確率」で見てみる
不整脈は、「止まった」「止まらなかった」という一回一回の結果だけを見ていると、不安がどんどん大きくなってしまいます。
そうではなく、
- どのくらいの頻度で起こるのか
- どのくらい続くことが多いのか
- どんな時に起こりやすいのか
- 何をすると止まりやすいのか
と、少し離れたところから眺めてみる。
そうすると、不整脈の姿が少し見えやすくなります。
次回は、この「確率で考える」とはどういうことなのか、もう少し具体的にお話ししたいと思います。

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