ときどきどきどき(2)

不整脈

前回に引き続き、今回も「不整脈」のお話です。

不整脈で受診される方のお話を伺っていると、あることに気づきます。

「ドキドキしている最中の様子」は、なかなか冷静には説明できません。

ところが、

「どうしたらドキドキが止まるのか」

については、驚くほど詳しく覚えている方が多いのです。

「冷たい水を飲んで、左を下にすると……」

例えば、こんなお話です。

「ドキドキしたら、冷たい水を飲んで、左側を下にして横になるんです。すると5分くらいで喉のあたりが『キュー』となってきて、その2分後くらいにドキドキが止まります。時々、何回か同じことをしないと止まらないこともあります。」

ここまで詳しく覚えておられることに、こちらが感心することもあります。

そこで、

「常温の水ではどうですか?」
「右側を下にしたら?」
「何もしなかったら、どのくらい続きますか?」

などと、さらに詳しくお聞きします。

すると、患者さんが少し寂しそうな表情をされることがあります。

おそらく、

「先生、そんなにいろいろ聞かないでください……」

というお気持ちなのかもしれません。

「止まる条件」が増えていく

もちろん、こうした情報は診断のためにとても役立ちます。

「何をすると症状が止まりやすいのか」は、大切な手がかりになることがあります。

ただ、ここには少し注意が必要です。

例えば、

「冷たい水を飲むと止まる」

という経験をすると、次にドキドキした時、

「冷たい水を飲まなければ!」

と思うようになります。

それでも止まらなければ、

「今度は左を下にしてみよう」

となります。

それでもダメなら、

「もう一度水を飲んで……」

と、どんどん条件が増えていきます。

気がつけば、

「ドキドキを止めるためのおまじない」

のようなものが、いくつも出来上がってしまいます。

「前は止まったのに……」

さらに心配なのが、

「前はこれで止まったのに、今回は止まらなかった。だから不整脈が悪化したのでは?」

と考えてしまうことです。

これは、とても不安になりますよね。

しかし、

「今回は止まらなかった」

という一回の出来事だけで、不整脈が悪化したと判断することはできません。

不整脈には、自然に止まるものもあれば、しばらく続くものもあります。

また、同じことをしても毎回同じ結果になるとは限りません。

「○か×か」ではなく「どのくらい?」

ここで大切になるのが、

「○か×か」ではなく「確率」で考えること

です。

例えば、

「冷たい水を飲めば必ず止まる」

ではなく、

「冷たい水を飲むと、止まることが多い」

と考える。

「左を下にすれば止まる」

ではなく、

「左を下にすると、止まりやすい気がする」

と考える。

この違いは、実はとても大切です。

一度うまくいかなかったからといって、

「もう効かない」
「不整脈が悪化した」

と決めつける必要はありません。

「おまじない」は悪いこと?

もちろん、自分なりの方法で症状が楽になるのであれば、それ自体が悪いわけではありません。

ただし、

「これをしなければ絶対に止まらない」

と思い込んでしまうと、ドキドキするたびに不安が大きくなってしまいます。

そして不安が大きくなると、今度は「ドキドキ」そのものにも敏感になってしまいます。

大切なのは、

「これをすると止まることが多い」

くらいに、少し余裕を持って考えることです。

不整脈を「確率」で見てみる

不整脈は、「止まった」「止まらなかった」という一回一回の結果だけを見ていると、不安がどんどん大きくなってしまいます。

そうではなく、

  • どのくらいの頻度で起こるのか
  • どのくらい続くことが多いのか
  • どんな時に起こりやすいのか
  • 何をすると止まりやすいのか

と、少し離れたところから眺めてみる。

そうすると、不整脈の姿が少し見えやすくなります。

次回は、この「確率で考える」とはどういうことなのか、もう少し具体的にお話ししたいと思います。

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